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解夏/さだまさし [書籍]

昼過ぎにやっと目を覚ました。
買っておいたメロンパンを食べながら牛乳を飲む。
よく見るとパンも牛乳も賞味期限が一日切れているけどまぁ気にしない。
んーまだ腹が減っているなー、と思ったら無印の「鶏団子入り中華がゆ」がテーブルの
上に置いてあるじゃない。あとで食べよー

嫁さんは金曜日から学生時代の友人達と二泊三日の京都旅行に行っている。
皆恐ろしく多忙なのにそれぞれが何とかやりくりしてスケジュールを調整したらしい。
よく会社の同僚とも話すのだが女性は元気である。いくつになっても一緒に旅行したり
食事したり習い事をしたりする友達がいて、友達と遊ぶために日々頑張れるなどと
言うのだ。すごいなぁ。確かに男性はそういった横の繋がりをキープするのは苦手
かもしれない。僕が学生の時仲の良かった友達と旅行するところを想像してみる。
おっさん四人で二泊三日の京都旅行…。あまり画にならない。

そういったわけでダラダラと過ごしている。
一人暮らし時代を思い出すなぁ。

解夏

解夏

  • 作者: さだ まさし
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫

東京で教師をしていた隆之は、視力を徐々に失っていく病におかされ、職を辞し、母が住む故郷の長崎に帰った。そこへ東京に残した恋人の陽子がやってくる。この先の人生を思い悩む隆之。彼を笑顔で支えようとする陽子。ある日、二人はお寺で出会った老人から「解夏」の話を聞く―。

ねじまき鳥クロニクル<第2部>予言する鳥編の”井戸に入る僕”を読んでから
自分の短期失明体験が蘇り、本棚からさだまさしの『解夏』をひっぱり出してきた。

シンガーソングライターとしてのさだまさしにははっきり言って全く興味が無い。
小説家としては初小説『精霊流し』がベストセラーとなり話題になったのはなんとなく
知っていたけど読む気にはならなかった。ある日書店で『解夏』のあらすじを目にし
即購入を決めたのだが、どこかでさだまさしの小説って面白いんかなぁと疑問を持っていた。
が、家に帰って夢中で読んだ。さだすげー

主人公の隆之は(またこの名前がね…)ベーチェット病という難病に冒されて両目の
視力を徐々に失っていきやがて失明するという運命を背負う。故郷長崎のある寺にいる
老僧から解夏(げげ)の話を聞く。解夏とは仏教の僧が夏に行う安居という修行が終わる
時をいう。対語は結夏(修行が始まる時)。失明するという事実を知った隆之は”失明する
恐怖”という行が始まり(結夏)、やがて失明した瞬間にその恐怖から解放される(解夏)。
隆之は故郷である長崎で<自分の眼の残り時間の全てを賭けて、歩いて町の風景を
全部眼の中に閉じ込めて記憶してしまおう>と決める。

こんな辛い行があるだろうか。
僕は幸い十日間という短い期間の失明体験であったが、徐々に視力を失うのではなく
視界が涙で滲んだように歪んだと思ったら翌日には見えなくなっていた。
「あなたは今日から十日間眼が見えなくなります」と宣言されたのであればどんなに
ラクだったかと思う。なぜならその時は十日後に見えるなんて保障は全くなかったのだ。
主人公隆之のようにうろたえ絶望し、何で自分がこんな目に合わなければならないんだ
と運命を呪ったりした。あの時の自分に「大丈夫、ちゃんと治って回復する」
と言ってあげたいくらいだ(笑)。

ところでこの小説に出てくる人々だが皆温かく優しい。恋人の陽子、母親、病名を告げた
医師である幼馴染の博信、松尾、林老人…。どこかのサイトで「一人の人間の周りに
こんなにたくさんの優しい人間がおるかい!」と叫んでいる人がいた(笑)。だが自分を
思い返してみると皆温かい人ばかりだったかも。家族、友達、恋人(←いなかった…)。
埼玉から駆けつけて来てくれた奴、お見舞いに漫画持ってきた奴(読めねーよ)、
ある友人は10cm四方もある文字で”早く治すんじ”と書いた手紙をくれたり、もう一人は
手紙の文字を木工用ボンドでなぞりその凹凸で読めるようにしてくれ、そして一言
「今後は点字だろうからまずこれで練習しろよ」…(シャレになってない)。
そういやあの時のお礼を言ってないや。

『解夏』には人間の弱さと強さ、そして解夏を迎える隆之を支える多くの人々の気持ちが
描かれていて、読了後に不思議な温かさを感じてしまった。さだすげー

『解夏』は映画化もされ、僕はDVDで観たけどそれなりに面白かった。
公式HPの”動画配信”はぜひチェックしてもらいたい。もうこれだけで…。
だけどドラマ『愛し君へ』は設定が気に入らずに観ていない。原作は失明する主人公の
職業は教師だがドラマは写真家であった。もともと見る事に大きな意味を持つ”写真家”が
失明する設定はなんか安易な気がしたのだ。恋人からの視点を重視したというのは、
まぁ面白いのかもしれない。

さだまさしの小説は今後要チェック、かも。


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コメント 3

さだまさし大嫌いッ!だけど・・・

というわけで?
軟弱シンガーソングライターさだまさしは好きになれませんが、
小説については貴方がいうように読んでみれば面白いのかも…
(多分読まないだろうけど)
nice!と思うのはkasokageさんと貴君のまわりの友人達。
シャレにはならなかったかもしれないけど
不器用な若者達の精一杯の優しさが感じられますね。
by さだまさし大嫌いッ!だけど・・・ (2005-05-22 18:54) 

親切な人

その時、「目が見えないくらいなら死んだ方がまし!」と
言った人がいたんですよね。
どういう人なんだか・・・。
by 親切な人 (2005-05-22 19:12) 

kasokage

>さだまさし大嫌いッ!だけど・・・殿
さだまさしは某タクロー氏が嫌いだったんですよね、たしか。
僕も『解夏』がなければ決して彼の小説を読むことはなかった(笑)
ボンドの友は現在研修医、巨大文字の友は医学部五年生。彼らのような優しいドクターが増えてくれるといいなぁと思います。

>親切な人殿
親切な人はものすごく素直な人なんです(苦笑)
誤解を受けちゃうこともしばしば!?
by kasokage (2005-05-22 22:14) 

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